「遠州好み」の代表作、京都だけでなく、日本を代表する名庭園、桂離宮をご紹介します。

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桂離宮の沿革

桂離宮は後陽成(ごようぜい)天皇の異母弟、八条宮初代智仁(としひと)親王により、宮家の別荘「桂山荘」として1615年に創建されました。智仁親王が1629年に没した後10年余り荒廃しましたが、八条宮家を継いだ長子の智忠親王が加賀藩主前田利常の娘と結婚し財政支援を受けることで復興が進み、ほぼ今日の姿となりました。

桂垣と桂穂垣

桂離宮は、京都中心部の西方、嵐山から南に流れる桂川の西岸にあります。桂離宮を外界と隔てている生垣は「桂垣」(かつらがき)あるいは「笹垣」と呼ばれる有名な垣根です。根の生えた生きた笹竹を編み込んで垣根にしています。バス停や駅から向かう桂川沿いの道沿いにあります。

「桂垣」は、途中から「桂穂垣」(かつらほがき)という垣根に変わります。これは、切った太い竹を縦に建てて、横に笹の細い枝を編み込んだものです。四つ目垣などと比べて手の込んだ感じがあります。
ここは、まだ庭園の外です。この先に入場門があります。

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では、いよいよ開門です。中の様子を見ていきましょう。

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回遊式庭園の散策開始

では、いよいよ池泉回遊式庭園の散策です。まずは門から「外腰掛」迄の様子をご紹介します。モミジなどの緑のアーチがかかった、小さな青石が敷き詰められた延段を歩き進みます。

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「外腰掛」は茶室「松琴亭」の待合として作られたものです。茅葺寄棟造りで、柱も梁も束も皮付の自然木を用い、竹垂木を見せた化粧屋根裏なっております。

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「外腰掛」に腰掛けたとすると、正面にはソテツが見えます。これは、大名家からの献上品だそうです。

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斬新な市松模様の美しい松琴亭

続いて、「外腰掛」から茶室「松琴亭」へと進んで行きます。

ここからは、切石と自然石の「行」の延段を進んで行きます。

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すると、正面のアイストップには灯篭があります。

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左に折れて、飛び石の上を進んで行きます。すると、チラッと「松琴亭」が見えてきます。ここ桂離宮は、なかなか次の建物の全景が見えない様になっています。次の建物への期待を高める工夫です。

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続いて、「岬灯篭」と呼ばれる丸く平たい石で作られた州浜の先端にある灯篭が見えてきます。海上につきだした灯台の様な美しい景色です。

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そして、来た道の方に目線を変えると天橋立に似た島の向こうに「書院」が少し見えてきます。

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大きな切石のダイナミックな橋を渡ります。写真は「松琴亭」の躙り口側から振り返った様子です。曲線の飛び石の後の直線です。曲線と直線の融合、このあたりに「遠州好み」のデザインを見る事が出来ます。また、石橋の向こう側の荒々しい石組は「源氏物語」の松風の巻の荒磯の石組です。

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そして、いよいよ「松琴亭」の様子を見ていきましょう。

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斬新な青と水色の市松模様が目を引く、とても美しい襖や床の間です。

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峠の茶屋風の賞花亭

「松琴亭」をあとにして、飛び石を進みます。

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中島の一つの小高い斜面を登ると、そこには「賞花亭」があります。この桂離宮の中で最も高い位置にあります。「松琴亭」と同じように北側を向いており、茅葺切妻屋根に皮付きの柱を用いています。

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南側の竹の連子窓を通してみる景色は別荘地の森の中にいるかのようで美しいです。

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賞花亭から園林堂

続いて、「賞花亭」と同じ中島にある「園林堂」へと向かいます。「賞花亭」から北へと進むと橋があり、その向こうに「古書院」が見えてきます。これもまた、松で少し隠されています。そこからUターンしてまた南へと進みます。「書院」の見え方が少しづづ変わっていきます。

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「園林堂」は「賞花亭」の山裾にあり、本瓦葺宝形造り屋根の持仏堂です。今は安置されているものはなく建物だけが残っています。桂離宮全体の中では少し異質な雰囲気な建物ではありますが、これはこれで美しい景観を作り出しております。起承転結でいうと転にあたる気もします。

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六つの下地窓が特徴的な笑意軒

続いて橋を渡り中島から出ます。一転して真っ直ぐなアプローチを進みます。その先には切石の人工的な汀線に面した田舎屋風の茶室「笑意軒」があります。茅葺寄棟屋根に杮葺(こけらぶき)の庇を付けた間口の広い建物です。

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縁側に面した障子の上には横並びに異なる6つの下地窓が設けられています。これは下地の組み方をそれぞれ変えることで実現しています。また、その上に掛けられている「笑意軒」の扁額は曼殊院良恕法親王の筆です。

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部屋の奥にある障子越しの風景も、一枚の絵を眺めているかのようで美しいです。

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月見台のある書院とその眺め

続いて、「書院」です。残念ながら書院内部は非公開です。ですのでその南側を通りながら歩を進めていきます。ふと、池の方を見ると中島に架かる橋が大変美しい景観を生み出しております。

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さらに進むと、書院から突き出た月見台があります。この月見台は古書院の二の間の広縁正面に位置います。竹簀子で作られており、夏は納涼床として、秋は月見として苑内を見渡せるこの場所は使われていたものと思われます。

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開放的な茶室月波楼

最後は古書院に近い池辺の高みに建つ開放的な茶室「月波楼」のご紹介です。月を見るのによい位置にある茶室で池を眺めてとても見晴らしの良い茶室となっております。

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今回は、桂離宮を散策するようにご紹介してまいりました。回遊式庭園の醍醐味が伝われば幸いです。当日予約ができるようになり以前よりも参観がしやすくなったかと思います。皆様も是非訪れてみてはいかがでしょうか?

アクセス
〒615-8014 京都府京都市西京区桂御園



  • 電車を利用する場合
    阪急京都線 桂駅から 徒歩20分

  • バスを利用する場合
    市バス 桂離宮前から 徒歩8分


TEL : 075-211-1215
公式HP : https://sankan.kunaicho.go.jp/guide/katsura.html